導入
日本は社会制度が崩壊への一途を辿っていると言われて久しいですが、その中で年金の受給が75歳以降になるかもしれないとのニュースが飛び込んできました。
もし実際にそうなってしまった場合、サラリーマンの運命はどうなってしまうのでしょう。
今回は、自営業やフリーランス等の会社に属さない側の人達の国民年金と、サラリーマンの厚生年金とを比較して、国家によるサラリーマンへの隠された差別の実態を暴いていきましょう。
国民年金
国民年金の加入者はその収入の多寡に関わらず、60歳まで定額積立を行い、65歳から受給が開始されます。
加入者全員が一律支払いのため、簡単に計算をすることができます。
国民年金の保険料の支払額は16,900円/月です。
1年間での支払額は
16,900円×12ヶ月=202,800円/年
となります。
これを20歳から40年間掛け続けるとすると
202,800円×40年=8,112,000円
となり、日本人は一生のうちにおよそ800万円を年金として支払うことになります。
これに対して満額支給額は
778,500円/年ですので、月に直すと64,875円/月の受け取りになります。
日本人の平均寿命から算出すると
男性は
778,500円 × 14年 + 64,875円 × 8ヶ月 = 11,418,000円
女性は
778,500円 × 21年 + 64,875円 × 5ヶ月 = 16,672,875円
これが男女それぞれが一生涯に受け取る年金の総受給額となります。
現在の制度がこのまま継続するならば、男性は1.4倍、女性は2.1倍が戻ってくる計算になります。
これを利回りに換算すると、男性は1.48%、女性は2.44%となります。
利回り(%) = { ( 分配金 – 税金 ) / 投資元本 } / 運用年数 × 100
それに加え、あまりスポットの当てられない部分かとは思いますが
・保険料の全額を所得から控除できる
・年金の受取にも各種控除が適用される
という点もあり、現在の低金利基準で考えれば、かなり優良な金融商品であるのは間違いありません。
しかし、現在議論されている年金受取75歳問題はこの根底を覆してしまう、恐ろしいことなのです。
年金支給開始年齢を75歳まで引き上げることで、総受給額は
男性で
778,500円 × 4年 + 64,875円 × 8ヶ月 = 3,633,000円
女性で
778,500円 × 11年 + 64,875円 × 5ヶ月 = 8,887,875円
となり、特に男性の場合は掛け金の総額(約800万円)よりも少なくなってしまいます。
国民には公的年金への加入が義務付けられていますが、国民年金の場合はその手続きが個人の自主性に任されています。
罰則も何もありませんので、制度に魅力がないと判断されれば、未加入者や未納者が爆発的に増えることは可能性として十分にあります。
厚生年金
ところで、年金財政の赤字は誰が補填しているのでしょう。
日本には国民年金と厚生年金の2種類の保険制度しかありませんので、国民年金での負債分は厚生年金で賄うしかありません。
サラリーマンからぼったくるのに厚生年金ほど良い商品はありません。
サラリーマンは強制的に厚生年金に加入しなければならない上に保険料は給料から天引きされる仕組みなのですから。
厚生労働省は「厚生年金は掛け金の2.1倍になって返ってくる」と主張しています。
これが本当であれば、そもそも年金問題などというものは存在しないはずです。
厚生年金はその保険料の半額が会社負担なのはみなさんご存知のところだと思います。
厚生労働省はそれを利用し、サラリーマン個人が負担する半額分だけの保険料を基準にすることで厚生年金の利回りを2.1倍にかさ増ししているのです。
2014年に内閣府が会社負担分を加えた全額分での保険料で厚生年金の利回りを試算した過去があります。
それによると、2014年時点で54歳以下のサラリーマンの人々の厚生年金利回りはマイナスになっています。
厚生年金は我々現役世代の全ての日本人にとって、払い損なのです。
2019年10月1日から日本の消費税は8%から10%に上がりました。
わずか2%の負担増で大騒ぎになりました。
しかし、年金保険料の料金改定には国会の議決が必要ないという厚生労働省にとって最高の裏設定が存在します。
国民がどれだけ騒ごうと自由に搾取したいだけの料金を設定することができてしまいます。
年金 = 保険料がいずれは本人に返還される
という前提であるため、議決を通す必要がないということが認められているのです。
ただ、その実態は、サラリーマンが納めた保険料の半分は国民年金の赤字の穴埋めに流用され、払った本人に返還されることなく消えてしまっている、というのが悲しい現実です。
まとめ
この年金受取75歳問題は、現段階では「65歳から受け取るか、受け取り倍率にブーストを掛けて75歳から受け取るか」というあくまで受給者側が選択可能な制度ではあります。
当ブログをご覧になっている方の多くは長期投資家であると思われますので、セミリタイアやFIREを人生設計に組み込んで考えておられる割合もそれなりに高いと思います。
受給開始年齢まではまだまだ長い年月がかかると思いますが、ふんわりとでも自分が65歳、75歳になった時の金融資産の状況を押さえておいた方が良いかもしれません。
あらゆるアンテナを張って、時代に荒波に飲み込まれないようにしていきましょう。
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